在庫車があまりにも魅力的で思わず興奮してしまい、店名の由来を訊き忘れてしまったが、フランス語で数字の『5』を意味するショップ名からも察しがつくようにCINQ(サンク)はフランス車に強いお店だ。もっと言うと取扱車両の8割~9割を占めるというルノーのスペシャリストで、とりわけカングー1の取扱数の多さが際立つプロショップである。
当サイト「車 市場」では敷居の低さが売りで、小回りの利くプロショップのことを「車屋さん」として再定義しているが、ヤングタイマー世代のルノーが取扱車種の中心となり、カングー1に精通しているCINQもまさに車屋さんの好例だといえる。ファクトリーの奥に商談ルームがある店舗の雰囲気は紛うことなき昭和チック(もちろん、イイ意味!)で、この懐かしいスタイルをよくぞキープしていてくれた!とウレシクなってしまった。気軽に入店できるため、マニア層だけでなく、ファミリー層のユーザーも多いという。
ちなみに、ファクトリー/商談ルームの階下にて保管している販売車両(もの凄く、まじめに、しっかり整備されている/取材時はフィアットの在庫もあり)のコンディションがすこぶるいいのに、価格が随分リーズナブルだったので、ついついその気=何を買おうかな……というノリノリな気分になってしまったわけだが、筆者はイタフラ好きを公言しているものの、実はイタリア車しか買ったことがないので、今回のCINQ訪問時に人生で初めてフランス車を買うシミュレーションを脳内で実行してしまったことを告白しておく。
そして、もうひとつお伝えしておくべきことがある。「車 市場」が購入したヤングタイマーを担当スタッフが普段使いして長期リポートするコーナーに登場しているカングー1は、CINQで購入した車両なのだ。レポートの内容を有意義なもの(ヤングタイマー世代のルノーを狙っている皆さんにとって参考になるようなもの)にするために「車 市場」が敢えてCINQにオーダーしたのはエンジントラブルで不動になった個体だった。その復活までの詳細は、下記URL(http://blog.livedoor.jp/u_cg02/)にて紹介している。ぜひともご覧いただきたい。
かつてJAX(輸入車インポーター)のスタッフだったという森代表は、1996年に独立してCINQをオープンした。JAX時代に携わっていたルノーを創業当初から取り扱ってきたので、ルノーの販売・整備歴が足掛け22年ということになる。CINQがまじめに整備し、ユーザーに提供しているユーズドカーのラインナップは新車でデリバリーされたクルマの顔ぶれとシンクロするので、その時代ごとに取扱車種が変化してきたわけだ。ルノーの身近なモデル名で説明すると、サンクの時代、ルーテシア(クリオ)の時代を経て、いまはカングーの時代となっている。メガーヌからセニックへの乗りかえをたくさんサポートした時期もあったそうだ。
いつの時代にもまじめに整備することを企業理念としてきたCINQでは、現在も「次は一年点検でお会いしましょう」とユーザーに胸を張って言えるぐらいまで、取扱車両のコンディションを上げることを基本コンセプトにしている。実際には納車から半年後の無料点検を実施しており、このタイミングでのオイル交換工賃を無料にしているそうだ。
「無料点検時にその後の作業メニューを考え、愛車の状態を効率よく改善していく整備計画を提案しています」とは森代表の言葉で、「DPOシリーズの4ATはセンサーなどが壊れると3速ホールドのセーフティモードになるんですよ。つまり、トランスミッション本体がダメになったのではなく、他の部分が壊れただけなんです。よくフランス車の4ATは壊れると言われますが、それは間違いで、一度エンジンを切るとリセットされることもあります。くれぐれも3速ホールドのままで走らないでくださいね。本当に壊れてしまいますから」とも語ってくれた。
CINQはカングー1の販売数、ファクトリーへの入庫数が首都圏屈指なので、最後に“カングー1=小カングー”と“カングー2=デカングー”についてアレコレ語ってもらった。
「小カングーは新車で販売された台数が多く、いわゆる分母が大きいので、CINQでの取扱数も多いわけです。いま、うちで面倒を見ているクルマの半分以上が小カングーといった感じですね。やはり、ボディが5ナンバーサイズなので都心でもラクに運転でき、フロアがビニールなので雨に濡れたベビーカーなどを気軽に放り込める点が魅力です。汚れを拭き取りやすいビニール仕様のフロアは、愛犬家にも好評ですね。働くクルマっぽい仕様にするのが定番のカスタムだといえますが、ここ最近、二極化してきたといえ、道具感を追求する方向性とピカピカに磨き上げる方向性に分かれてきました。お決まりのトラブルはオルタネーターのプーリーがロックすることですが、これは対策品が付いていれば大丈夫です。うちでも対策品をたくさん付けましたが、いまでも稀にダメなプーリーが付いたままの個体が流通しているので、CINQでは納車整備のときに対策品と交換しています。あと、TDCセンサーと呼ばれる上死点センサーが接触不良を起こすことがあり、エンジンを始動できなくなる場合があります。この部分も納車整備時や無料点検時にチェックするようにしています。デカングーは、さほどトラブルについて心配することはありません。強いて言うなら、リアブレーキのパッドがフロントと同じぐらい減りやすいことぐらいですかね」。
小カングーが壊れそうだからデカングーに乗りかえるというケースがあるそうで、CINQでは、もちろんカングー2のユーズドカーも在庫している。ほんの少しマニアックなクルマだといえるカングー1とは異なり、カングー2はより一般的なクルマとして認識されているといえ、ナビやバックカメラの装着を希望するユーザーが多いそうだ。オシャレなファミリーカー/働くクルマとして市民権を得たカングー1とカングー2は、これからも数多くのユーザーを獲得していくだろう。
未来のオーナーを育てることが重要であると感じているCINQでは、子どもたちがクルマ好きになるようにいろいろ配慮しているそうなので、カングー1/カングー2を買おうと思っているフランス車フリークは、パパの単独行動でクルマを見に行くのではなく、家族全員でCINQを訪問してみることをオススメする。
リーズナブルなフランス車をリーズナブルなランニングコストで楽しむ。そのために、販売する車両は必ず自社のファクトリーで仕上げ、その後も自社のファクトリーでメンテナンスを行う。「どんな時代になっても、車屋さんはまじめが一番」と話す。
CINQ
株式会社サンク
代表取締役 森 秀一氏
東京都練馬区豊玉北3-14-6
TEL.03-5946-6767