日常+週末ドライブ+自動車趣味生活(ガレージライフ)編
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はじめに/ヤングタイマーとは?
ヤングタイマーは、初度登録から15~30年ほど経過しているクルマのことで、一番旧いモノで'80年代後半に発売された国内外の車両といったイメージです。この頃に生産されたクルマといえば、デザイン性の高さや品質のよさをアドバンテージとしていました。いま見てもカッコよく、しかも実用性が高くって安価な点が特徴だといえます。本特集では、ヤングタイマーならではといえるそれらの魅力に着目し、毎月、車 市場 名車館 編集長の筆者(高桑)が気になるヤングタイマーをピックアップ。記事をアップしています。
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「ヤングタイマー」を「実用車」として楽しむ際の注意点について
初度登録から15~30年ほど経過しているので、やはり、ヤングタイマーも年々良質なクルマが減ってきています。ショップ側の立場(視点)から申し上げると、販売車両の仕入れが困難な状況になってきているわけです。クルマに詳しくない方の中には、ヤングタイマーを最新の国産車を扱うような気軽な感覚で足として使用し、保管やメンテナンスも疎かにして、わずか数年で廃車にしてしまう心無い人もいます。ヤングタイマーに対する正しい知識とクルマへの愛情があってこそ「パーツが豊富なクルマは旧くても足になる」という記事が成立するので、これからヤングタイマーをゲットしようと思っている方は少しだけ心して購入に臨んでください。
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ポルシェ 928とは?
もはやポルシェと同義語となっている「911シリーズ」よりも上級のマーケットをターゲットとしていたポルシェ 928は、1977年にデビューしたラグジュアリーなグランドツーリングカーです。911よりも快適性が重視されており、911のように空冷水平対向6気筒エンジンをリアエンドに積むのではなく、928は新開発された水冷V型8気筒エンジンをフロントに搭載し、FRレイアウトを採用していました。水冷V型8気筒エンジンの排気量は、初期モデルの4.5リッターから最終的に5.4リッターにまで拡大されました。
928は当時ポルシェ社の社長であったエルンスト・フールマン氏の主導により、同社にとって象徴ともいえる911の代わりになるモデルとして開発されたともいわれており、発売当時よりAT車が用意されるなど、ポルシェのラインナップにおいてはひと際高級なグランドツーリングカーとして位置づけられていたわけです。車両本体価格自体も、911より高額でした。
次世代を担うグランドツーリングカーとして、1978年モデルから量産が開始された928の開発では、まず、軽量化が重要視されました。具体的に説明すると、ドア、フロントフェンダー、ボンネットのマテリアルとして、スチールではなくアルミニウムを採用。ボディに一体化されたプラスチック製バンパーの背面には、アルミニウム素材のパーツが組み込まれ、8km/h以下の速度で衝突した場合には損傷することなく復元できるようになっています。
928の丸みを帯びたフロントセクションには、丸型の電動ポップアップヘッドライトを装備。フロントと同じように丸みを帯びたハッチバックスタイルのリアには大型のウィンドウ(リッド)が備わっています。
また、928はFRレイアウトであっても前後の重量配分にこだわって設計されており、トランスミッションとデフと一体にしてリアアクスル側に搭載したトランスアクスル方式(セントラル・チューブでエンジンとトランスミッションをつないでいる)を採用。もっと分かりやすく説明すると、トランスミッションとデフをリアアクスルの手前にレイアウトし、センタートンネル内のプロペラシャフトを介してエンジンと接続することで、車重の理想的な前後配分を可能にしていました。
さらに928のリアアクスルには、全体的に新設計が施されました。ヴァイザッハ・アクスルと呼ばれるサスペンションの特徴は、トーインを安定化させる機能です。このメカニズム(パワーオフと制動時のトー角をイン方向に変化させ、クルマの姿勢を安定させる)はパッシブ・リアホイール・ステアリングとして機能し、優れた安全性を確保するために大きく貢献しています。
●928(1978-82年モデル)
リアスポイラーの無い丸みを帯びたリアエンドは、928ならではの特徴です。またこのモデルは後の派生モデルとは異なり、フロントスポイラー、リアスポイラーを装備していません。928の4.5リッターエンジンは、240psの最高出力を誇りました。
●928 S(1980-86年モデル)
928 Sはブラックのフロント/リアスポイラー、ボディカラーと同色となるサイドプロテクションストリップ、そして、サイドインジケーターライトを装備しています。エンジンの排気量は初期の4.7リッターから5.0リッター(1986年モデル)まで拡大されました。最高出力は300psで、1984年モデルでは310psを実現。触媒コンバータが採用された1986年モデルでは288psとなりました。1984年にS2、S3へと発展。
●928 S4(1987-91年モデル)
928 S4は、エアインテークを備えた丸みのあるフロントエプロンが印象的。傾斜したリアエンドでは、フラッシュサーフェスデザインのワイドなテールライトや後方に突き出たブラックのリアスポイラーが印象的です。5.0リッターエンジンを搭載し、最高出力は320psです。
●928 GT(1989-91年モデル)
928 S4よりもさらにスポーティなモデルで、トランスミッションは5速MTのみが設定されました。5.0リッター、V型8気筒エンジンの最高出力は330psまで増大。独創的なデザインのホイールが特徴です。
●928 GTS(1992-95年モデル)
928が進化し、最終発展型として結実した928 GTSには、張り出したリアフェンダー、レッドのリアライトパネル、ボディカラー同色のリアスポイラー、カップ・デザインのドアミラー、17インチのカップ・ホイールを標準装備。GTSに搭載された5.4リッター、V型8気筒エンジンは、最高出力350psを誇りました。
今回ピックアップしたのは1991年式のポルシェ 928 S4です。販売店舗のオートモービルアシスト・ブレスでは、代表の加藤さんが自分で乗りたいクルマを販売しているので、この928 S4も日常の使用+週末に楽しむドライブ+ガレージなどでの自動車趣味生活をじっくり楽しむことができます。
いまでも高い人気を誇る911シリーズが延命されたことにより、924、944、968、928といったトランスアクスル系のポルシェ製水冷FRスポーツカーたちはフェードアウトしていきましたが、どのモデルのデザインも洗練されていて旧さを感じさせないので、この機会にボスキャラ的な928に乗ってみてはいかがでしょうか。