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本当に欲しかったアルファ・ロメオは……。

11年前に購入したアルファ・ロメオGT1600ジュニア(1974年式)を今でも大切にしておりますが、中学生の時に初めて好きになったアルファ・ロメオはジュニアZでした。

勢い余って、針金で組んだフレーム上に紙粘土をペタペタ貼り、ジュニアZのプロポーションを子供部屋の一角で再現したこともありました。37歳(来たる3月で38歳になります!)になった今日でも、ジュニアZこそが一番カッコいいアルファ・ロメオだと思っています。

ザガートが手がけたアルファ・ロメオに魅せられたことからもわかるように、ずっと、アルファ・ロメオの魅力はスタイルがいい点だと考えていました。しかし、実際に1974年式のアルファ・ロメオを購入し、全国各地を元気よく走り回ったことで、少しずつ考え方が変わっていきました。そう、アルファ・ロメオの神髄は卓越した走行性能の中に潜んでいたのか……と思うようになったのです。

3年前に購入したフィアット・ムルティプラの走行性能の高さも確かに国産車を凌ぐ素晴らしいものでしたが、クルマとしての素性の良さは明らかにアルファ・ロメオGT1600ジュニアのほうが勝っていました。少なくとも、私にはそう感じられました。不思議なことですが、35年前に造られたクルマのほうが走りやすかったのです。
 
105/115系のアルファ・ロメオを運転していると、クルマが自分の手足のように動く感覚を味わうことができます。別の言葉で説明すると、クルマと人間が同化する“官能的な時間”が訪れるのです! 私はいつも自分が車体を構成するネジのひとつになったような陶酔感の中で愛車を運転しています。きっと、往時のタッツィオ・ヌボラーリ選手も無心の境地でアルファ・ロメオを駆っていたのでしょうね。
 
敷居が低いにもかかわらず、馬や牛のエンブレムを掲げるクルマたちと同じように、視覚、聴覚、嗅覚、そして、触覚を刺激してくれるアルファ・ロメオは、人生をドラマチックにしてくれる最高のエンターテイナーだと思いますよ。